2023年2月
琉球王朝時代の文化が詰まった織物、沖縄の伝統工芸品『琉球花織』とは?
〈琉球花織って何?〉
“琉球”と言えば、色鮮やかで独特な色遣いが印象的な『琉球紅型』を思い浮かべるかもしれません。
『琉球紅型』が沖縄の染め物代表なら、『琉球花織』は織物代表。沖縄の伝統工芸品のツートップ。
花織は14世紀大陸から伝わり、琉球の豊かな自然と独自の文化に育まれた織り方で、産地によって織り方やデザインが多種多様にあります。
琉球花織は、一時は戦争により技術が途絶え壊滅的な状態でしたが、今では職人さんの工夫や努力によって復興、若い職人さんたちのセンスによって、現代に合う色遣いで独特な織物が作られています。
しかしこの10年で生産量が1/10に激減してしまった、とっても貴重な織物です。
〈琉球王朝の織物の歴史〉
琉球王国は450年もの長い間、大陸や東南アジア各国との交易を中心に栄えました。
特に政治の中心・首里では身分により衣服が区別され、国王や王妃、王族しか着用を認められない特別な織物(糸染めも含む)が織られていました。
花織だけを織る専属の職人を囲い込んで作らせ、高度な技術が発展しました。
当時の文 献や発掘調査により、戦後何十年も後になってやっと解明できた技法もあります。
本州では真似できない独特な個性を持つ織り方が花織です。
※人間国宝 宮平初子さん
首里織の作家で、沖縄の伝統工芸の発展に尽力した県内女性初の人間国宝。
1998年 「首里の織物」重要無形文化財保持者(人間国宝)
2000年 勲4等宝冠章受章
2022年 永眠
〈特徴〉
「花」とは”柄”のこと。柄の色糸を刺繍のように立体的に浮かせるのが花織の特徴です。
下の織り方を1種類、または2〜3種類組み合わせて1本の帯を作ります。
〈すべて手機で手織り〉
古くからある織り方なので機は小さくてシンプル な構造ですが、複雑な織り方になると職人さんが 図案を見ながら手と足で綜絖を上下させます。
熟 練した技が必要で味がある織り方ができます。
量 産できずとても希少!手仕事なので1日数10cm しか進みません。
1反(着物は13m)織るのに何日もかかります。
〈願いが込められた柄〉
「花」の形には意味があります。
*銭花(じんばな)
お金をかたどった模様。裕福になりますようにとの願い。
*扇花(おーじはな)
末広がりの扇の形。子孫繁栄の願い。
*風車花(かじまやーばな)
97歳になると風車を配る習慣から、長寿の願い。
〈主な技法〉
*手花織(てぃーばなおり)
柄の部分のタテ糸を手ですくい取って、刺繍のように「花」を手で織り込んでいく技法。
*首里花織(しゅり はなおり)
琉球王朝の首都・首里で織られていた織り方。上流階級の衣装として発展した。
地糸を浮かせて「花」を作るので、他の織り方のように裏に糸が渡らないのが特徴。
*読谷山花織(ゆんたんざん はなおり)
沖縄本島中部の読谷村で作られる花織。
地糸とは別の「花糸(柄になるヨコ糸)」で「花」を作るので、裏を見ると横向きに花糸が渡っている。
*知花花織(ちばな はなおり)
琉球王朝時代、伝統行事などの晴れ着として発展、戦後に衰退したが、近年復興された。
読谷がよこ向きに花糸を入れるのに対し、たて向きに花糸を入れるので、たての花色が同じになるのが特徴。
〈花織の証紙〉
花織は沖縄の伝統的工芸品です。国や県の検査機関、各地域の組合の登録証があります。
左から
*沖縄県の証紙:沖縄県織物検査規格に合格した証紙。
*伝統証紙(通称 伝産マーク):経済産業大臣が指定した伝統的工芸品に付けられる。
*産地の組合証紙:作られた地域の花織事業協同組合が発行する証紙。写真は南風原で作られた花織。
*沖縄県織物検査済の証紙:沖縄県伝統工芸振興条例に基づき検査、合格した織物に付けられる。
まれに証紙がないものがありますが、歴史と実力がある名門工房の作品には証紙がないこともあります。
〈控えめな本物志向のあなたに 花織の名古屋帯〉
手機ならではの温かみのある風合いが、締める人の内面まで表すような品の良さを感じさせる花織。
細かな配色は織り子さんに任されているそう。洗練された配色と「花」の組み合わせに織り子さんのセンスが光ります。
花織の名古屋帯はシンプルな幾何学模様が合わせる着物を選ばず、コーディネートの幅が広がります。
・大島紬
・結城紬
・久米島紬
・琉球絣
など、味わいのある風合いが魅力の紬に合わせると、いつもの紬も新しい感覚に。
しゃんとした着心地のお召しの着物や、絞りの着物、小紋はシンプルな柄も華やか小紋にも。
・お召し
・杢目絞り(藤娘きぬたや )
・小紋
同窓会、女子会、友達とランチ会など、たまには気分を変えて着物のおしゃれを楽しみたいな♪という時。
歌舞伎など観劇やコンサートなど品よく装いたい時などに。
かわいらしさもありつつ、落ち着きもあるコーディネートにぴったりです。
〈織り人の想いが詰まった一点物〉
大らかで細かいことは気にしないのが沖縄らしくていい所です。
図案はあるものの細かい部分の色遣いや間隔は職人さんのセンスに任されています。
「今日はピンクの差し色がいいなぁ♪」なんて気分で織るから同じものができてきません。
職人さんが心を込めて一手間一手間大切に織り上げた、帯や着物は唯一無二。
沖縄の美しい自然を映したようなキレイな色遣いと可愛らしさが魅力の花織。
ますます生産数が減っているので、「これ!」と一目惚れした1本と出会ったら、迷わず手に入れてくださいね!
更新日 | 2023/02/28
カテゴリ | 名古屋帯
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