座談会 前編「呉服屋さんの仕事ってどんな仕事？」にお答えします！　社長+社員3名 先輩に聞く毎日の仕事の様子

呉服屋の仕事に興味を持って下さりありがとうございます！

興味があるけれど、自分にできるのかな？向いてるのかな？そもそも実際にはどんな仕事内容なんだろう？…etc.　特殊な業界なので、外からは見えづらくエントリーしづらいという不安があるかと思います。

そこで、山本呉服店に求人の問い合わせをして下さった方にご協力を頂いて、呉服業界のあれこれ、山本呉服店のあれこれについて、ざっくばらんにお答えする座談会を開きました！

呉服業界への就職や転職を考えている皆さんの参考になれば、そして我が山本呉服店にエントリーして頂ければ…そんな思いで、社長はじめベテランスタッフが2回に渡ってお答えします！

答える人：

山本呉服店社長・山本千恵子

販売員(勤続年数５年)・福永

池田店店長 販売員(勤続年数22年)・木村

北方店店長 販売員(勤続年数26年)・白木

 

質問する人：

Ａさん(20代前半)

夏祭りやお正月に着物を着る機会があり、和装に興味を持っています。苦しくて堅苦しいイメージの和装だったけれど、実際に着てみると普段とは全く違う自分になったような特別感があって、とても気分が上がりました。思っていたよりも苦しくないし、また今風のアレンジなど思っていたよりも自由に色々楽しめるというのも嬉しい予想外でした。
当たり前のように毎日洋服を着てきたけれど、もっと着物を着てみたいな、着物のことを知りたいなと思うようになり、安直かもしれませんが、呉服屋さんに就職したらいつも着物を着て、着物についても知ることができるのかなと思っています。

 

Ｂさん(30代前半)

もともと古典や日本の伝統文化に興味がありました。大学卒業後他業種で働いていましたが、転職を考えはじめ、その候補として好きな日本の伝統文化に携われる呉服業界を検討し始めました。周りに呉服業界に勤めている人もいないため、直接業界の話を聞く機会があまりありません。また、人によっては呉服業界はノルマなどがきつそうだからやめておいた方が良いとマイナスイメージを語る方もいるので、迷っています。直接お話を聞ける機会をとてもありがたく思っています！

 

Ｃさん(20代前半)

アパレル業界に就職したくて調べているうちに、呉服業界も一つの選択肢だなと思うようになりました。着物とはほとんど縁のない生活を送ってきたので、呉服業界について一から知りたいと思っています。

 

第1回　実際の仕事について教えてください！

社長：今日は山本座談会の企画にご協力・ご参加くださりありがとうございます。

せっかくの機会なので、遠慮なく何でも聞いて、呉服業界や山本呉服店への理解を深めて頂ければと思っています。早速ですが、一番聞きたいこと、知りたいことって何ですか？

 

Ａさん：まずは、働く上で実際に自分がそこで働いているイメージができるかどうかって大事だと思うんです。

今の私は、興味はあるけれど具体的にイメージがわかない状態なので、実際にはどんな内容の仕事があって、毎日どんな業務をしているのかをまず聞かせてください。

木村：一番は着物や帯、和装小物を販売する仕事です。これは外から見ていてもすぐにわかる、想像のつく仕事内容だと思いますが、ただ販売するのではなく『コーディネートして販売する』のが実際です。もちろん、お客様のご要望によって、着物だけ、帯だけ、小物だけという単品で販売をすることもありますが、和装の販売の醍醐味は、お客様の好みや雰囲気に合ったコーディネートを提案するというところにあると思います。

福永：実際には外から見える販売の仕事は本当にごく一部で、それ以外の見えづらい仕事の方がたくさんあります。例えば、山本呉服店で購入して頂いた着物は一生無料で着付けをするサービスを行っているんですが、お客様の着付けや着た後のクリーニングなどのアフターケアもその一つです。

それから、着物の良さを一人でも多くの方に知って頂くための啓蒙活動、具体的には、新聞や読み物、チラシなどを企画、編集、発送する作業もあります。ブログやInstagram、YoutubeやTicTokでの発信も仕事の一つです。それ以外でも、各店舗を運営するための日々の仕事として、店舗の掃除だったり、飾ってある花の水替えだったり、ディスプレイをチェックしたり…他業種でも行っているような基本的な仕事もありますし、これは山本呉服店の年中行事ですけれど、店舗の障子50枚の張替えなんかもありますね。山本呉服店では色んなイベントも企画していますが、その打ち合わせや準備、運営もあります。もちろん全て呉服販売に関することですが、何でも屋さんとでもいえるくらい、仕事の内容は多岐にわたっているので、必ず自分の得意なことを活かせるシーンがある仕事だと言えると思います。

 

社長：より具体的にイメージできるように、例えばある一日の流れ、そして1年の流れを表にまとめたので参考にしてくださいね。

 

＜ある一日の業務例＞

9:00　社員全員揖斐本店へ出社
朝礼、連絡事項の伝達、加工出し(家紋を入れたりパールトーンなどの加工、縫い上げ寸法のチェック、発送用の荷造りなど)

10:00　社員は各店舗へ移動し、開店
掃除、花の水替え、お客様にお出しするお茶の用意等　１日の業務の打ち合わせ

11:00   店舗のディスプレイの確認や在庫チェックなど

12:30  お昼(1時間の休憩)
※お客様の来店状況によって時間がずれることもあります。

13:30  紙媒体・Web媒体の記事作成、SNS（Instagram、Tictac等）の投稿、LINEカードの作成、イベント企画(2か月に1回程度の集客のための催事)のミーティング

17:30  帰宅
※遅番の場合は18:00に店を閉めて帰宅

 

＜一年間の流れ＞

1月　元旦の着付け・来年の成人式用振袖の販売

2月　入学式・卒業式用の着物の販売

3月　卒業式の着付け

京裳苑のDM作成

4月　1～2週目入学式の着付け

桜の花見旅行や結婚式のための着付け

京裳苑のお客様勧誘、商品の勉強

5月　結婚式のための着付け、京裳苑のお客様勧誘、商品の勉強

6月　京裳苑（山本呉服店一社が京都で主催する、一流メーカーの新作着物展示販売会）

7月　夏祭り、花火大会向けの浴衣の販売、着付け

池田店でプチ京裳苑開催

8月　夏祭り、花火大会向けの浴衣の販売、着付け、アフターケア、卒業式の袴合わせ
店舗の障子の張替え、インターンシップ（中学生の職業体験）の受け入れ

9月　決算、棚卸

10月 七五三準備

11月 七五三

12月 お客様配布用のカレンダー作成、年末年始の着付け予約、
クリスマス、年末、お正月のパーティーシーズン用のおしゃれ提案

 

 

Ｂさん：周りに呉服業界に興味があると告げると、マイナスイメージと共にやめた方が良い的なことを言われることがあるんですが、例えばノルマってあるんですか？

 

社長：残念ながら呉服業界にはノルマが厳しいとか、従業員も無理やり買わされるみたいな黒い噂があり、そういうお店もあるのが実情です。でも、山本呉服店ではそういうものは一切ありません！断言します！

 

白木：目標設定はあるけれど、ノルマはないですね。なので、ノルマ達成のために従業員やその家族や友達に買わせるというようなことも一切ないです。強制的に買わされることは、社長の言う通り一切ありませんが、着物好きが働いているので、自ら買うことはあります。

 

Ａさん：呉服屋さんで働いていて良かったなと思うこと、楽しいなと思うことを聞かせてください！

 

社長　：着物は今では成人式や結婚式など特別な日に着ることが多いと思うんですけど、そういう人生の節目や家族の御祝い事に携わることが出来るのは、何度経験しても良いものだなと思います。例えば、成人式のために振袖を誂えたお客様が、結婚される時やお子さんが産まれて七五三や入園・入学式でまたいらっしゃる、そしてまたそのお子さんが大きくなられて夏祭りに着る浴衣を…と来られるようなこともあります。お客様と２代、３代、うちの場合は歴史も長いので４代、5代と続いてこられているお客様もいらっしゃって、世代を超えてお付き合いできるのも特別な嬉しさがあります。あとは、うちの店で扱った着物って時が経ってもすぐにわかるんですが、昔先代や先々代が売った着物に世代を超えて再会した時も喜びを感じます。

 

福永：着付けとか、着物に関する技術や知識が身に付くのはもちろんですが、普通の会社ではできない経験ができるのは良かったなと思います。社員研修の一環として、京都の着物や帯の工房を見学して実際に作られるところを見させてもらったり、また、一流の料理店でマナーの勉強を兼ねて懐石料理を食べたり、舞妓さんとお話しさせてもらったり。研修というと堅苦しく感じるけれど、ご褒美的な一面もあってとても楽しいです。日常業務の中だけでなく、こうした特別な研修の機会もあるので、日ごろの仕事で得た知識を実体験でより深い確実なものにしていけるように感じています。

木村：人生の節目に身に着ける特別な物を買って頂くことから、お客様に失礼がないようにしっかりとしたマナーや気配りが求められるので、普段の仕事を通して、一生役に立つ礼儀作法や、社会人としてどこに行っても通用するような常識が自然と身についたのは良かったなと思います。

 

白木：私自身、着物が好きでここで働いてるわけですが、この着物素敵だけど私には似合わないなぁと思う物って結構あるんですよ。その自分には似合わないけれど素敵な着物が、担当のお客様には雰囲気がぴったりで、バチッとコーディネートが決まって、またそれがお客様のどんぴしゃで気に入って頂けたりすると本当に嬉しくて、この仕を事やっててよかったなと思います(笑)。本当に気持ちのいい、幸せな瞬間なんですよ！

 

Ｃさん：他の販売業、特にアパレル業界との違いは何だと思いますか？

 

木村：一人のお客様と、深く長いお付き合いができること。それから、お客様のご家族皆さんとお付き合いできることでしょうか。お母さんと娘さんだけでなく、お父さんやおじいちゃん、おばあちゃんも一緒にご来店されることも珍しくありません。着物を通して晴れの日、人生の節目に関わらせて頂くので、普通であればご家族の中でしか分かち合わない幸せのお裾分けを頂けるのも特徴かもしれません。

福永：何より、日本の伝統文化に直に触れられるところだと思います。職人さんの魂がこもった芸術作品ともいえるような物に日常的に触れられるのは一般的な販売業ではないことだと思います。

白木：大安や仏滅など、六曜を気にするのは特徴的だと思います。お客様が気になさらない方でも、こちらから、例えば納品は良いお日柄を提案させて頂いたりしますね。

 

社長：　それから、社員の口が堅いというのもありますね。ご結婚などプライバシーに関わることがあるので、その辺は他言無用を徹底するよう意識しています。

 

 

 

向き不向き、適性ってありますか？

Ａさん：呉服屋さんで働くにあたって必要な資格や免許、知識やスキルはありますか？着物には興味があるけれど、自分では着られない、着付けができないんです。そんなのでも大丈夫でしょうか。
また、品物の良し悪しが全く分からなくても務まりますか？

 

社長：資格や免許については、普通自動車免許があってパソコンのWordやExcelの入力ができたら大丈夫です。事前に必要な知識やスキルは特にありません。「未経験者大歓迎」としている通り、着物についての知識や着付けの技術は、入社してから少しずつ、ライフワークと思って学んでいってもらえれば大丈夫です。

逆に、他店とは考え方やノウハウも違うので、何も知らない真っ新な状態から山本呉服店色に染まってもらえた方が良いと思っています。着付けに関しては、慣れの部分も多いですし、先輩社員がゼロから教えるので安心してください！最近の取り組みとして、定休日を増やして、社員教育やミーティングの時間も増やしているので、必要なことは働きながらしっかりと学んで頂けると思います。

 

白木：とにかく毎日、店に置いてある「本物」の着物に触れるので、働いているうちに「目利き」になれるます（笑）。

 

Ｂさん：ズバリどんな人材を求めているのか、聞かせてもらえますか？従業員に求める資質や、どういうタイプの人に向いていると思われるのか。

 

福永：人と話をするのが大好きで、コミュニケーションをとるのが得意な方、赤ちゃんからお年寄りまで誰とでも楽しく話しできるような方に来て頂けたらと嬉しいなと思っています。というのも、呉服屋はお客様の人生の節目に関わらせて頂くことが多く、一人のお客様とのお付き合いにとどまらず、そのご家族とのお付き合いになることが多いからです。

 

木村：お客様の節目を一緒に心からお祝いしたり、特別な日をより良い素敵な日になるように一生懸命になれるような共感力のある人、何にでも楽しみを見出せるタイプの人は向いてるんじゃないかなと思います。

 

社長：信用商売ではあるので、約束を守れるとか、口が堅いなど、お客様の信用に応えられる資質は求められると思います。話好きでもおしゃべりな人はダメですね。

 

～　座談会　前半はこの辺りで一旦終了　～

後半は「山本呉服店について知りたい」に続きます！