季節の着こなし
防寒だけじゃない、着物とあなたの魅力を引き立てる、特別な一枚。 コートや羽織のコーディネートの基本
寒さも忘れる、心まで華やぐコート・羽織の紹介です
冬の着物姿を美しく見せるには、コートや羽織が欠かせません。寒さ対策だけでなく、着物や帯を守り、装いの格を整える役割も持っています。
(着物:高田勝 名古屋帯:帯屋捨松 羽織:堀一の着尺から羽織仕立て)
洋服では寒くてもコートを着ないと「何か物足りない」と感じるのと同じように、着物でもコートや羽織を羽織ることで全体の印象がぐっと引き締まります。
着物姿の方を京都で見かけると、11月に入ってもコートなしで歩いている人はほとんど見かけません。寒さ対策だけでなく、帯や着物の汚れや引っかかりを防ぐ意味もあるからです。
また、日本の伝統的な考え方では、帯や着物を丸出しにするのは大人の女性にとって恥ずかしい行為とされています。春から夏にかけても、薄手の羽織やショールで上品に覆うのがマナーです。羽織物をせず帯が丸見えの状態は「帯付き」と呼ばれ、大人の女性としては避けたい装いです。
◆コート・羽織の選び方
コートや羽織を選ぶ際には、着物の種類や用途、季節を考えることが大切です。実際に試着してみると、好きなものが似合わなかったり、意外なものが似合ったり、発見があるので楽しいです。
ポイントはこの3つ
1.フォーマルかカジュアルか どの着物に合わせたいか
2.着る季節はいつ? どのくらいの防寒が必要?
3.襟の形やコート丈の長さなど、どんなイメージで着こなしたいか
◆柄付けのタイプ
コートの柄付けは大きく分けて二つあります。
1.絵羽(えば)タイプ:柄が全体に繋がったフォーマル向け。留袖や訪問着に合わせると格調高く見えます。前も後ろも柄が繋がっています。
最初からコート用の長さで染められた生地から作ります。

(着物:染の百趣矢野の訪問着 コート:堀一の道中着)
2.小紋タイプ:柄が繰り返しのカジュアル向け。紬や小紋に合わせると自然で上品な印象に。

(小紋の着物:野口、コート:野口の着物の生地で道中着)
お好きな柄の小紋の生地を選んで作れます。どんな生地でも良さそうに思われますが、薄すぎる生地だとヘラヘラして良く見えませんし、座った時にお尻の部分にシワができやすいのでお値打ちすぎる生地を使うのはお勧めしません。また大きめの柄など、コートに向いている色柄もあるので着物とコートは少し違う感覚で選ぶとより一層おしゃれが楽しめます。
山本呉服店では柄合わせを大切にして、着られる方の身長に合わせてバランスがいい場所に柄が来るように仕立てています。
結婚式や公式な場でも着たい場合は、最初の一枚として絵羽タイプを選んでおくと安心です。格が高いものを着て行って失礼に当たることがないからです。
逆にカジュアル向けの小紋タイプのコートや羽織は色柄や飛び柄の自由度が高く、着物や帯のコーディネートの延長で選べます。全身のスタイリングを考えて何枚もあると着回しが楽しくなります。
◆素材と季節
例えば、洋服で考えると…
秋:薄手で風を通さないコート。朝夕の冷え込みにちょうど良い厚さ。
冬:ウール、カシミヤ、ダウンなど暖かく、真冬でも安心。
春:軽やかなスプリングコート。風を防ぎつつ、季節感を演出。
襟元が寒いときはマフラーやストールをプラスする感覚でショールを羽織り、温度調節をします。真冬はコートとショールを組み合わせ、春は片方だけ、など洋服感覚で調整すると簡単です。
これと同じように、着物も厚さ・薄さ、素材と温かさ、形などが選べます。用途に合わせてご提案できます。
◆おしゃれのポイント
コートや羽織は防寒だけでなく、装い全体を格上げするアイテムです。
上質な素材のコートは自信をもって羽織れるので、姿勢や立ち居振る舞いにも影響します。
(着物:染の百趣矢野 訪問着、被布襟コート:堀一)
(道行コート:襟の形が四角くなっています)
コートの襟や羽織紐はアクセサリー感覚で楽しめ、遊び心を演出できます。
羽織はコートよりカジュアルなので、色柄・長さの自由度がとても高くなります。
下に着る着物は小紋や紬なので、その色柄・帯の雰囲気に合わせて着まわします。

(着物:高田勝の小紋 羽織:堀一の着尺から羽織)
現在の主流はひざ丈(膝が隠れるくらい)のコート・羽織ですが、30年前はおしりが隠れる程度の短め丈が流行していました。古い丈のまま着ると時代感が出てしまうので注意が必要です。
長羽織(ひざ下までの丈)は、色柄のバランスを意識して上級者のコーディネートが可能。朝ドラなどの明治後半から大正・昭和初期の映像を参考にすると、着物との組み合わせのおしゃれさがわかります。
◆コート・羽織の活用術
最近は「車で移動するからコートはいらない」と考える方もいますが、大人の女性としては上質なコートを羽織ることで、外見や印象がぐっと洗練されます。コートや羽織を一枚羽織るだけで、着物姿全体が整い、上品さが増します。洋服のコート感覚で考えれば、季節や気温に応じて自然に使い分けられます。
特にカジュアルで自由度が高い羽織は、前から帯や帯締め・帯揚げも見えるのでトータルコーディネートが映えます。羽織紐で遊ぶことも出来ます。季節やイベント(ハロウィンやクリスマス会など)に合わせた色遣いやワンポイント小物を入れることで、センスの良さが際立ちます。

コートや羽織は、防寒、汚れ防止、装いの格の維持と、役割がたくさん。素材や柄、季節に応じて上手に選ぶことで、冬の着物姿はより魅力的に見えます。
初めての一枚はフォーマルにも着られる絵羽タイプがおすすめですが、カジュアル向けの小紋タイプも一緒に揃えると、日常からお出かけまで幅広く活用できます。
寒さやマナーを意識しながら、お気に入りの一枚を羽織って冬の着物を楽しみましょう。コートや羽織を上手に取り入れることで、寒い季節でも美しさと上品さを失わず、周囲に差をつける着物スタイルを実現できます。
上質な一枚を羽織るだけで、着物までおしゃれに映える。冬の外出が楽しみになるのがコートです。
山本呉服店は着物を着た状態でコートの試着ができます。
当店で作っていただいた着物でなくてもご遠慮なくお持ち込みください。
コートと着物の色柄のバランスやお顔映りも確認しながら選ばれるとイメージが付きやすく、間違いないのでおすすめです。
※山本呉服店では襟元や紐の部分につまみ細工のお花をつけたり、コートの縫い目にポケットを付けて利便性を高めております。
(文・山本千恵子)
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