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【紬とは2】紬の魔法:織る前に完成を描く技術「絣(かすり)」の作り方

【紬とは2】 では紬の一番重要な特徴「絣(かすり)」についてご紹介します。

紬が「究極の贅沢」と言われる最大の理由は、布を織ってから色を塗るのではなく、「先に糸を染め分けてから、パズルのように組み合わせて、織りながら柄を浮き上がらせる」という、非常に手の込んだ工程にあります。

 

1.糸に「設計図」を刻み込む(括りの場合)

まず、真っさらな糸に「ここは赤、ここは白」と、ミリ単位の印をつけます。次に、染めたくない部分(白く残したい部分)を、職人が指先で一箇所ずつ、糸で固く縛っていきます。これを「括り(くくり)」と呼びます。括る時は染料がしみこまないように堅く結ぶことが求められます。多くの産地では男性の職場です。

少しでも計算が狂えば、織り上げた時に柄がバラバラにずれてしまいます。一反の着物を作るために、何千、何万という交差点の「位置」を職人は頭の中で描き、糸を染め分けているのです。

 

2.「逆算」の染め上げ

縛った状態の糸を染料に浸すと、縛った部分だけが染まらずに残ります。

このとき職人の頭の中にあるのは、「この糸とあの糸が、織り機の上で交差したときに、ちょうどこの位置で花柄になる」という緻密な計算です。

3.ズレが「味」になる精密さ

織り始めると、一本一本の糸が重なり合い、少しずつ柄が浮き上がってきます。

数ミリの狂いも許されない過酷な作業ですが、手仕事ゆえのわずかな「かすれ」や「ズレ」が、機械には出せない紬特有の温かみのある表情を生み出すのです。

日本の織物技術は紬だけでなく西陣織なども含めて基本的な工程は図解した流れで同じように進められています。
ここから複雑な模様や多色遣いする工夫が生まれ、糸染めの工程が増えたり、織工程が何層構造にもなって複雑なプログラムになっていきます。

 

※括り以外の技法:産地によって様々な道具で絣をつくる工夫がされています。

2.擦り込み柄が厚紙に写し取られている

厚紙を1枚ずつ順に糸に合わせて、コツコツ手作業で印の部分に色を挿していく

 

3.板締め

木の板に糸を挟んで染料を流して染める。溝の部分に染料が入るので色が付く

 

◆ 今や失われつつある「経緯絣(たてよこがすり)」の技術

現在、熟練した職人の減少により、手間をかけた紬の生産がガタッと減少しています。そのため市場に出回る紬の多くは、効率を重視したものが増えています。

 

・たて縞・縞:たて糸だけ絣糸を使って柄を出す

近くで見ると…

 

・よこ絣:よこ糸だけ絣糸をつかって柄を出す

 

・後染め 白い紬糸(染めていない糸)で無地の生地を織り、後から柄を染める

※代表的なのは牛首紬:節のある薄くて丈夫な白い生地を織り、後から加賀友禅・京友禅などを施す。小紋に値するので、紬のような軽さでありながら、華やかな印象になる

 

そんな中、経糸と緯糸の両方を計算通りに交差させて柄を作る「経緯絣」は、現代では非常に希少な存在となりました。この技術を持つ職人は年々減少しており、まさに「絶滅危惧種」とも言える手仕事です。

 

◆ あなただけが纏う、緻密なグラデーション

縦と横の糸がピタリと重なった瞬間にだけ生まれる、独特の「かすれ」や「にじみ」。
これは機械織りや染めでは決して真似できない、手織りならではの温もりと奥行きです。

 

世界一細かい柄表現が可能な日本の伝統技法が「絣」です。職人は「糸を染めるのではない、模様を設計しているのだ」と言い切ります。情熱と時間が注がれた熱のこもった貴重な一枚。袖を通すたびに、職人の息遣いと、日本の伝統美の極致を感じていただけることでしょう。

 

~ 参考に ~

絣の着物は全国各地、様々な産地で織られています。
一般的に有名な「大島紬」「結城紬」などでも、たてよこ絣も、よこ絣、無地、後染め、それぞれあります。また絣の作り方、糸の特徴等は産地によって異なり、それが味になるのでお好みの風合いに出逢えることが着物の楽しみの一つです。

技法の難度や手間のかかる度合い、希少価値がお値段に反映されるのが基本的な考え方です。ただ、その色柄が自分に似合うかは別の問題なので、総合的にご検討されて、お召になるものを決められるのがと良いかと思います。

 

(文・山本千恵子)

 

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