季節の着こなし
着物の印象は「5ミリ」で決まる!裏地の主役、八掛(はっかけ)の役割とおしゃれの楽しみ方
冬の足音が聞こえ始めると、着物好きには楽しみな「袷(あわせ)」の季節がやってまいります。
今回は、袷の着物になくてはならない存在でありながら、実は最高のおしゃれポイントでもある**「八掛(はっかけ)」**についてお話しさせていただきます。

◆八掛(はっかけ)とは?——着物を守る「縁の下の力持ち」
袷の着物は、表地と裏地を合わせて仕立てます。その裏地のうち、袖口や裾まわりにつける生地のことを「八掛」と呼びます。
よく見ていただくと、裾や手首の部分で、裏地が表地よりも5ミリほど少しだけはみ出しているのがお分かりいただけるでしょうか。この、わずかに八掛がはみ出した部分を**「ふき」**と呼びます。
※男性の着物は「通し裏(とおしうら)」または「総裏(そううら)」と言い、すべて同じ生地を使います。

なぜ「ふき」を作るのでしょうか?
実はこれ、単なるデザインではなく、先人の知恵が詰まった**「究極の実用的工夫」**なのです。
* 表地を守る: 裾や袖口は、地面と擦れたり、何かに引っかかったりして最も汚れやすく、傷みやすい場所です。
* 交換してリフレッシュ: もし表地が直接擦れてしまったら、お着物そのものをダメにしてしまいます。しかし、八掛を出しておくことで、傷むのは八掛だけで済みます。八掛を新しいものに交換すれば、お着物はまるで新品のように美しく生まれ変わるのです。
* ふっくら、温かく、高級に見せる: 丸みがあって温かく見せ、高級感を与えるのに役立っています。実はふきはプレスを掛けてはいけない部分です。ペッチャンコになると、薄っぺらく安っぽい印象になってしまうのです。
私たちもよく着るお着物は、裾が擦り切れてしまうことがございますが、そのたびに八掛を仕立て替えて、大切に長く愛用しております。
◆5ミリの魔法!八掛で変わる「着こなしのセンス」
「たった5ミリ見えるだけなら、何色でもいいんじゃない?」と思われるかもしれません。
ですが、実はこの5ミリの色選びこそが、お着物全体の印象を劇的に変える魔法なのです。
実用的な工夫を、どうせならおしゃれに楽しもうという日本人のポジティブな気配り、素敵だと思いませんか?
時代と共に変わる色のトレンド
昭和30年代頃のお着物には、朱色や鮮やかなオレンジ色の八掛がよく使われていました。「昔のお着物だな」とひと目でわかるのも、この八掛の色による影響が大きいです。
今でもその慣習でお勧めされるお店も多いのですが、山本呉服店では**「着物はファッション」**だと考えております。
古臭い印象になってしまう色合わせではなく、お客様の好み、その方の持つ雰囲気、そしてお召しになる場所に合わせて、幅広く柔軟なコーディネートをご提案させていただいております。
◆八掛選びの「基本ルール」と「遊び心」
八掛の色選びには大きく分けて「フォーマル」と「カジュアル」の2つの考え方があります。
- フォーマルの場合:調和を重んじる
格式を大切にするフォーマルな場面では、**「表地と同系色」**にすることが基本の条件です。
* 訪問着・色留袖・黒留袖: 基本的には「共八掛(ともはっかけ)」といって、最初から表地と同じ色に染められた生地が付いています。
* 附下(つけさげ): 購入時に八掛が付いていないことが多いです。フォーマルとして訪問着と同格で装うことが多いため、表地から浮かないよう、ほぼ同色のものを選びましょう。
* 色無地: 表地を染める際、一緒に八掛も同じ色で染めるのが基本です。
※こだわりの強いメーカーさんや高額なお着物の場合は、別誂えで表地と同色でオーダーすることも可能です。
(↑附下:染めの百趣矢野 クリームの同色に近い八掛)
- 紬や小紋(普段着)の場合:自由に個性を楽しむ
普段着である紬や小紋には、決まったルールはございません、ここが一番の楽しみどころです。
初心者の方へ: お着物の柄の中に使われている「差し色」から一色取ると、全体が美しくまとまります。
上級者の方へ: あえて対照的な色を持ってきたり、パッと目を引く色で「冒険」してみるのも面白いですよ。歩くたびにチラリと覗く色が素敵だと、それだけでその日の気分も上がります。
ただ、八掛の本来の役割は「汚れ・傷みの防止」です。
ですので、一般的には着物の表地より濃い色がお勧めです。手首や裾は擦れて汚れたり、埃を吸い込みやすいので、薄い色だと汚れが目立ってしまうからです。ただ、現在は毎日着物を着られる方以外は、行事やイベントなどにお召になる程度だと思います。八掛が汚れたり傷むほど着られる方は少ないので、明るく可愛らしいお好きな色を選んで頂いても良いと思います。
(↑身長に合わせた実際の着姿と同じ長さで撮影してあります)
(↑白大島 落ち着いたくすんだグリーン 着物が単色なので八掛の色次第でどんな印象にもなります)
◆「譲り受けたお着物」が最新のおしゃれ着に!
お母様やおばあ様から譲り受けた大島紬などはございませんか?
「なんだか色が派手で、今の自分には合わないかも…」と感じてタンスに眠らせているとしたら、本当にもったいないことです。
そんな時は、八掛の色を変えるだけで、驚くほどモダンで今風なお着物に変身いたします!
お洗濯(洗い張り)をして、寸法を整えるタイミングで八掛の色を選び直してみませんか?
「昔のものとは思えないほどおしゃれになった!」と、お客様からも大変ご好評をいただいております。
山本呉服店で、あなたらしい「色」を見つけませんか?
これから新しいお着物を誂えるなら、ぜひ八掛選びにもとことんこだわってみてください。
表地との組み合わせは無限大。あなただけの個性が光る、世界に一枚だけのコーディネートを一緒に形にしていきましょう!帯の合わせ方も自然と変わってくるので着回しが出来るようにもなります。
「どの色がいいか迷ってしまう」「自分に似合う色がわからない」という方も、どうぞご安心ください。山本呉服店のスタッフが、お客様お一人おひとりの個性を引き立てる最適なコーディネートをご一緒に考えさせていただきます。
言葉だけではなかなか伝わらない絶妙な色のニュアンスも、実際にお着物を見ながら合わせてみると、「これだ!」という納得の一色が見つかります。
私たちは、そのお手伝いができることを心より楽しみにお待ち申し上げております。
【ご相談の予約はこちらから】
* お電話 山本呉服店 池田店 0585‐45‐7140
* 簡単にご利用いただける山本呉服店 公式LINEをからどうぞ
今回お伝えした内容について、他にも気になることはございませんか?
例えば、八掛の素材(正絹やポリエステル)の違いや、具体的な色の組み合わせ例などについても詳しくお話しさせていただけます。お気軽にご相談ください。
(文・山本千恵子)
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