工房探訪記
桝屋髙尾
お取り扱い商品
独自の技術で、
西陣に新しい風を吹き込む
「桝屋髙尾」
京都西陣の町で織物業を営む「桝屋髙尾」は、西陣で長らく受け継がれてきた技や美意識を守りながら、常に意欲的に新しいことに挑戦をしものづくりに取り組んでいます。
複雑な陰影を保ちながら、静かに輝く独自の風合いの「ねん金綴錦」の帯は、山本呉服店でも目の肥えたお客様達から絶大な信頼を得ています。
桝屋髙尾を語る上で欠かすことができないのが、「ねん金」という宝物裂のこと。
今から約40年前、名古屋にある徳川美術館が所蔵していた小袱紗の端切れを再現するために、西陣の機屋を何軒も訪ね歩いて再現できる職人を探していました。そんななか、ある方の推薦を受け現会長の髙尾弘さんのところに依頼が舞い込みます。正倉院の織物の研究なども手掛けていた弘さんは「やってみましょう」と引き受けました。
とはいえ、再現は困難を極めます。歴史的価値のある美術品である小袱紗を持ち出すことはできないため、弘さんはだ一度だけ美術館で見て取った記憶と記録を頼りに、自らの感性を信じてこの仕事を進めていきました。
「織り出すまでにまずは材料をどうするか」
「緯糸に織り込まれていた変わった金糸をどのように作るのか」
「経糸はどうするか」
「どれくらいの密度で織ればいいか」
…と、気の遠くなるような試行錯誤の連続でした。
そして、ついにその最大の特徴が“緯糸”であると突き止めます。
しかし構造が分かったものの、緯糸に使われていた糸が普通に材料屋さんで仕入れられるものではありませんでした。弘さんは太さが不揃いの真綿糸に細かな金箔を巻き付けた“ねん金”の糸を紡ぐことを思いつきます。一本の糸の中に太い細いがあって節がある特徴的な糸(=ねん金糸)を、弘さんは自ら作り始めました。また、経糸は人間国宝の平良敏子さんに芭蕉の糸で作っていただくよう依頼をしました。
こうして長い時間をかけて、糸づくりからひとつひとつ工程を経て織り上げ、小袱紗を再現。徳川美術館に収めることができました。
ねん金を作る技術で、
糸に色をつける新たな挑戦
糸そのものという織物の材料を作ることは桝屋髙尾にとって初めての経験で、大きな糧となりました。
「ねん金糸で帯を織ったら、これまでにない美しいものができる」
そう思った弘さんは徳川美術館から特別な許可を得て、新しい帯づくりの挑戦をはじめました。
とはいえ、小袱紗を作る技術をそのまま帯に転用できるわけではありません。芯糸に色を染める彩ねんきん糸を開発するためには、独自の創意工夫と発想が必要でした。5年以上の長い歳月を費やし、弘さんは「色ねん金」を生み出しました。
金と銀の糸に色をつけるためには、材料に秘密があると言います。
蚕から手紡ぎの真綿を撚り上げたものをまず染色し、箔をらせん状に巻いていきます。
糸自体に細い太い部分があるので、全体に箔が巻きつくわけではなく、加減を調整しながらつくることで、箔と中の真綿糸の色彩が融合して、美しいひとつの色彩に見えるのです。
「立体」である
織物の魅力をひきだす
父の弘さんの跡を継いで2015年に4代目当主となった髙尾朱子さんは、この糸そのものの魅力が伝わるものづくりをテーマに励んでおられると言います。
1.5メートルの広幅の織物が作れる手機の技術力を活かしてタペストリーやストールなどを作り、着物をお召しにならない方にも糸や織物の美しさに触れていただく事業をはじめたのも取り組みの一環と言います。
また、材料そのものへのアプローチや工夫をすることにも新たな挑戦に取り組んでおられます。
例えばこれは漆の箔を使って作られた糸。
光るものと漆と両方を用いることで独特のテリが加わり、色の深いものができるようになったそう。
「織物は、ものすごく高さの低い立体」と朱子さんは言います。
いかに奥行きをつけて文様表現をするか気をつけてものづくりをしていると教えてくれました。
朱子さんのノートを見せくださいました。
ページをめくると思い浮かんだ言葉やイメージがぎっしりと書き込まれています。
帯は着物を引き立てる存在であり、締めやすいことも大事だと言う朱子さん。
どういう色でどういう糸の使い方をするか、なるべく始めの段階で考えて図案にしていると言います。
西陣の機織りは工程ごとに職人が異なる分業制です。
そして、朱子さんは自らのことをオーケストラの指揮者に例えます。
どんな音楽を奏でたいかは指揮者にしかイメージできないけれども、
それをいろんな楽器の人に伝えないと指揮者の思うものはできてこない。
作りたいものをイメージし、それぞれの職人に自分の思いをポイントを押さえて伝え、形を作っていくことは、とてもそれに似ていると言います。
西陣の技術を次世代へ
本社から車で5分ほどのところにある工房を案内していただきました。
1階には機械織り織機が、2階には手織りの織機がずらりと並んでいます。
西陣ではこのように機械織機と手織り機のどちらも稼働している工房は珍しく、どの織機も休むことなく職人さんたちは手際よく作業を進めています。
また、若い職人さんが多いのも印象的です。朱子さんは「ベテランと若手がいい塩梅で一緒に仕事をしている」と言い、ベテランの職人の技術が次の世代へと継承されるよう10年ほど前から積極的に若い人も育てているそうです。
こちらの手織り機では若い職人さんが撚金で帯を織っています。
表面が下側にくるので鏡で確認し、柄や使う緯糸によって打ち込みの強さ加減を調整して織り上げていきます。
また同じ2階では熟練の職人が手織り機で織っています。
「濡れ緯」という3日3晩水に漬け込んだ緯糸をつかって織り上げているところでした。
水に浸して濡らした緯糸を使用して織ることで、軽やかでハリのある織り上がりになり、シャリ感が永く保たれるそう。 最近では西陣でも少なくなりつつある貴重な技術だとのこと。
こうしてベテランと若手が同じ工房で働くことで、長い年月をかけて西陣で育まれてきた技術のバトンを次の世代へとつないでいきます。
共に、新しいものをつくっていく。
山本呉服店は華やかで明るいピンクなど、発色のいい色を別注で依頼しています。
今までの桝屋髙尾ににない配色の依頼に、朱子さんもはじめは戸惑ったそう。
けれども、山本呉服店の好みにお客様がきちんとついてくれているということ、そして私たちのことを「共にものづくりをしているという感覚のあるお店」と嬉しい言葉で表現してくださいました。
機屋のものづくりの原動力となる「こういうものが欲しい」という具体的なイメージを持っている店だとおっしゃってくださいました。
撚金糸でつくる色糸は、無限にいろんなバリエーションが作ることができます。
例えば「ピンク」と一言で言っても、どういったピンクを合わせるかでまったく違った印象のピンクの糸が出来上がります。
そして、糸がいい感じにできたとしても、織ってみないとわからないのが織物の難しさです。
朱子さんにこれからの山本呉服店に期待することを伺いました。
「これまで以上に対話をする機会をもって、無理難題を言って欲しい」とのこと。
前向きな無理難題に応えようと努力することで、新しい色を発見したり、もう一個工夫を加えてまた違うものをつくっていこうとしたり、思いがけない副産物があると言います。
私たちの呉服店の仕事は、売りたいと思うものがなかったら商いができません。
そして、華やかで品がある良いものは実はそんなに多くはありません。
桝屋髙尾さんとはこれからも切磋琢磨しながら、お客様に喜んでいただけるものを共に作っていけたらと思います。
桝屋髙尾
京都市北区北野西白梅町77番地
TEL.075-464-0500
創業 1960年(昭和35年)11月
http://www.masuya-takao.co.jp/
当店お取り扱い商品のご紹介
桝屋髙尾の商品のご購入・コーディネート相談は山本呉服店へ
お問い合わせください。
山本呉服店では、桝屋髙尾商品とお持ちのお着物や帯を活かした
素敵なコーディネートをご提案しております。
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桝屋高尾
ねん金綴錦 袋帯
唐草七宝文商品番号 11351
伝統的古典柄である唐草と七宝を合わせたデザイン。地色はゴールド系ですが、淡い金を使ったねん金糸を使っているので、少し白っぽい上品な金とピンクの可愛らしい地色が段々になっています。白と瑠璃色の柄がはっきりと浮き出るので華やかな印象になります。留袖、訪問着、無地、華やかな小紋、振袖によく合います。
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桝屋高尾
ねん金綴錦 袋帯
子持七宝花菱商品番号 11350
伝統的古典柄である七宝と花菱を合わせたデザイン。地色はシルバーと藤色が段になっていて、はっきりと柄が浮き出るので華やかな印象になります。
留袖、訪問着、無地、華やかな小紋、振袖によく合います。 -
鈴木
唐綾錦 袋帯
錦繍菊華文様商品番号 4096
深みのあるこげ茶の地色に菊が咲き乱れる文様。オフホワイトから、ベージュ、茶色と少しずつ色を変えた八色の菊の花が艶のある糸で織られています。唐織の機屋の中でも小さい会社なので、一本一本丁寧に織られ、裏の糸の処理も丁寧に手作業で行われています。
お太鼓柄で、垂れの部分も柄が繋がっています。
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